補助事業の成果

 レーザ援用切削加工法(LAM:Laser Assisted Machining)では,レーザを照射することで被削材を局所的に加熱し,そのすぐ後方から軟化した部位を工具で除去する(Fig.1).加熱した部位は切削除去するため,熱影響による材料の変質を最小限に抑えることができる.本研究では,Y-TZPの高温特性からLAMにおける最適レーザ波長を決定し,微細精密加工を行うことを提案する.
 レーザ光の材料への吸収形態を波長ごとに評価し,Y-TZPの超微細・精密加工に最も適した波長を決定する.まず吸光度の波長依存性を分光光度計(日立分光 V670)で測定した(Fig.2).測定結果から吸光度の異なる4波長(266,355,532,1064 nm)のレーザでレーザ加工実験を行い,その加工溝におけるクラックの深さ,加熱の影響を評価した.このときの加工溝の概念図をFig. 3に示す.また,レーザ発振器には波長266 nmのYAGレーザ(タカノUVTS),355 nmのYAGレーザ(アドバンスオプトウェーブ Awave-UV355),532 nmのYVO4レーザ(アドバンスオプトウェーブ Awave-GR),1064 nmのファイバーレーザー(イエナレーザー JenLas fiber ns 20)を用いた.Table 1に加工を行ったレーザのパルスエネルギーを示す.

 レーザ光照射時,アブレーションによる加工溝ができ,クラックが材料深部へ伸びる.Fig. 4に波長355 nmのレーザで加工後の溝の断面をSEM(日本電子 JSM-7000F)で撮影した画像を示す.LAMではこのクラックを切削で除去する.工具への負担を減らすため,次の2点を最適波長を選択する際の評価基準にとった.①クラックが浅いこと,②クラック深部での温度が高いこと.クラックが浅いほど工具で切削する量が少なくすむ.さらに,クラック深部での温度が高いほど被削材が軟化しているため切削を施しやすい.そこで,クラック深さを実測し,クラック最深部での温度をシミュレーションにより取得した.このシミュレーションではレーザの照射スポットを熱源とし,全照射スポットからの加熱の影響を計算し重ね合わせた.その際,ガウス分布状の静止熱源から材料内部への熱伝導の一般解の公式を用いた.
 実測したクラック深さと,シミュレーションにより取得したクラック最深部での温度の関係をFig. 5に示す.これより波長355 nmにおいてクラックが浅くかつクラック先端温度が高くなることがわかる.これより,Y-TZPに超微細・精密なLAMを行うための最適レーザ波長を355 nmに決定する.


事業内容についての問い合わせ先

所属機関名 東京大学(トウキョウダイガク)
住   所 〒113-8656文京区本郷7−3−1
申 請 者 教授 杉田直彦(スギタナオヒコ)
担当部署 大学院工学系研究科機械工学専攻
E-mail: sugi at mfg.t.u-tokyo.ac.jp