コンセプト

複合材料を用いたマシニングセンタの開発



マシニングセンタは高精度・高能率な加工を実現するため,軽量・高剛性・高減衰性という特徴を併せ持つ必要がある.これまで一般的に使用されてきた鋳鉄は,剛性は高いが重量が大きく減衰性も低いという欠点があった.そこで本研究では複合材料である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を主構造材料として採用することで,優れた機械特性を持ったマシニングセンタを開発することを目標とした.CFRPとアルミハニカムを組み合わせることによって,従来の材料で構成された場合と比較して同等な剛性を保ちつつ重量を32%削減することに成功した.本機の開発で得た知見や知識を元に,現在は新たなマシニングセンタの開発に取り組んでいる.

環境対応型歯車研削加工機のための新たな冷却・潤滑方法の開発



歯車研削加工はねじ状の研削砥石と被削材である歯車がかみ合いながら加工が進行する.本加工においては研削液が加工点に到達しにくく,毎分200 L程度の大量の研削液を高い圧力で供給する必要があった.研削液の供給圧力を減少させ,供給量も減少させることが可能な新たな方法が求められている.一般に加工液の浸入を阻害する要因は,高速で回転している砥石の周囲に存在する連れ回り空気流である.連れ回り空気流を遮断する方法としてスクレイパーを用いる方法が提案されているが,その有効性には議論がある.本研究では回転している砥石の内部から研削液を供給することで効率的な冷却が可能になると考えた.歯車研削加工のシミュレーション及びモデル実験を通じて提案手法の有効性を実証した.現在は各砥粒を考慮した歯車研削シミュレーションの開発および実際の歯車研削砥石を用いた実証実験を行っている.

フェムト秒レーザ誘起高速現象の解明と超高速精密加工



フェムト秒レーザは10-15秒という極めて短い時間で微小領域に多量のエネルギを送り込むことができる.この極めて高強度な光をガラスのような透明材料に照射すると,本来吸収されないはずの光を材料に吸収させることができ,微細形状を創製することが可能となる.この特性を利用したフェムト秒レーザ加工技術は近年様々な分野において必要とされているが,加工速度が著しく低いという問題と加工時にクラックが形成され精密な加工が困難であるという問題を抱えている.
私たちは,光が材料に当たる瞬間に起こる現象をフェムト秒オーダで撮影可能な光学装置とその現象を解析可能なシミュレーションを構築することで,加工速度の遅さと精密加工の難しさを引き起こす物理メカニズムを解明した. 解明した物理メカニズムを逆に有効活用した新たなレーザ加工技術を開発し,従来の1000倍以上の超高速でクラックのない精密加工の実現に成功した.現在この技術をさらに改良するための応用研究と,より深い物理現象の解明を目指した基礎研究を進めている.

患者個別有限要素筋骨格モデルに基づいた人工膝関節の設計



人工膝関節の性能を向上させるために,有限要素解析(FEA)と筋骨格(MS)マルチボディダイナミクスの2種類の計算的生体力学手法が人工膝関節の設計と評価に広く使用されている.有限要素解析は,局所的なメカニクスの予測と人工膝関節の最適化に利用されている.筋骨格モデルは,関節および筋腱ユニットによって連結された骨からなる骨格から構成されている.筋骨格モデルは,生体力学的解析およびシミュレーションのために患者の個々の特徴を考慮することができる.本研究では,筋骨格モデルに有限要素法を統合したシミュレーションモデルを構築することで,対象別の人工関節の設計に必要な解析と最適化を可能にしている.このモデルは,カスタマイズされた人工膝関節の開発および整形外科手術のための主観的計画を容易にする,手ごろで包括的なツールとなることが期待されている.

骨切除を目的とした工具およびデバイス



人工関節置換術では,骨切除の精度は医師の技量に左右され,また,骨切除用ボーンソーの位置決め精度やたわみに起因する誤差が生じる.骨切除中の発熱による骨組織の壊死を防ぐため,厳しい温度制約が存在することも手術を困難にしている.そこで,骨の加工特性を観察することで得られた知見を基に,高能率・高精度・低温度の条件を同時に満たす生体適合型加工法,および,工具を開発した.具体的には,骨に生じる亀裂方向の制御や単一工程で荒加工・仕上げ加工を実現する革新的な切削工具,超音波一次元/低周波楕円振動補助加工を開発している.FEMを用いた解析,製作,評価を共同研究先企業の協力のもと研究室で実施する

機械学習の生産技術への応用



近年,機械学習の分野の発展が社会的な注目を集め,生産技術への応用が期待されているが,機械学習を生産技術へ応用した実用例は依然として非常に少ない.本研究室においては,機械学習技術を用いて,生産ラインの省人化や効率化を図る仕組みを開発することを目指している.具体的には,生産・加工のデータから学習することでシステムのパラメータを自動的に最適化することや,ロボットによるマニピュレーションを強化学習し,作業を自動化することに取り組んでいる.

ジルコニアセラミックスの選択的レーザ焼結,3Dプリンティング



ジルコニアセラミックスは高い硬度と靭性から人工歯冠の材料として最も期待されている材料である.その高い機械強度故,目標の形状に成形するのは非常に困難である.粉体から目標の形状へ直接できれば成形が容易になり,そのアプリケーションも広がると考えられる.私たちはジルコニアセラミックスが高温で導電性を示すという特徴を利用して,誘導加熱法を利用した積層造形法を提案した.現在は本方法の実現可能性を探るための基礎研究を実施している.

セラミックスのレーザ援用精密切削加工



歯冠材料として使用されるジルコニアセラミックスは難削材であるため、レーザで加熱・軟化させて切削工具で除去するレーザ援用精密切削加工を提案している。紫外線短パルスレーザを用いて提案方法の有効性を実験的に検証し、レーザを援用しない場合と比較して被削性が向上することを確認した。次ステップとしてレーザ援用ミリング加工法も開発している。実験および解析を通して加工現象に関する基礎知識を蓄積し、レーザ援用加工法が実用化される際の基礎を構築することを目指して研究を実施している。